2015年8月12日水曜日

「やりたい役」と「できる役」

先日のレッスン後、雑談しているなかで一人の生徒が言った言葉。。。

「どんな役でもやれる女優になりたいんです!」

ここで昔の私なら、間違いなく――

「お!その意気込みイイね~♪よし、一緒にがんばろう!」

そう言ってやれた。
でも、その時私の口から出た言葉は違った。

「何でもはやれなくていいよ♪ 自分に合った役さえ見つかれば」

もちろん、演技を学ぶ者はみな「いつか演じたい理想の役」を思い描いて演技を磨いていくのだが、必ずしもそれが「自分に合っている役」だとは限らないから難しい。。。

例えば、サバサバとしたボーイッシュな役にいくら憧れていても、本人の見た目や声がその役に見合っていなければそんな役は回ってこないし、もし回ってきたとしても観客が納得するクオリティに仕上がるかは極めて怪しい。。。
逆に本人が持つ可愛らしさを生かせる役のほうが無理せずラクに演じられて、そのうえクオリティの高いモノに仕上がるのなら、結果的にそれがその人の「当たり役」というコトになる。

私がこれまで出会ってきた多くの役者(志望)の人たちが、こういった「理想と現実」のギャップに苦しみ、この世界から去って行った・・・・・。
アナ雪じゃないけれど、もし「ありのままの自分」を愛するコトができたなら、自分の長所も欠点もその全てを「個性」として肯定できたなら、彼らの俳優人生はもっと充実したモノになったに違いないと思う。

私が講師として指導していくのは、俳優に必要となる「心構え」や「技術」であって、「個性」を摘み取ることでなはい。

私から見た生徒たちは、みんなそれぞれが個性的で魅力的だ。

そこに役者として必要な「心構え」や「知識」「ほんの少しの技術」を教えるだけで、観客から憧れられる存在に育ってくれるなら、講師としてこんなに嬉しいことはない。

願わくは、彼らが俳優人生を送るなかで自分自身のコトを心から愛せるようになってくれれば――。
その手伝いをするのが、講師という仕事なのかもしれない。


0 件のコメント:

コメントを投稿